こんにちは、獣医師の林です。
夏の暑さによるムシムシも終わり、寒い冬にかけて乾燥しやすい季節になってきました。
それと同時に、皮膚トラブルを起こしてしまう子も増えてきている印象です。
皮膚トラブルと一言で言っても、膿皮症と言ってジメジメ季節に多発しやすいものや、
季節性のアレルギーによる皮膚炎やノミダニ由来の皮膚炎、
食物由来の皮膚炎、乾燥由来の皮膚炎だったりと、その原因は多岐にわたります。
それぞれ原因が違うため、まずはそれぞれの原因(湿度が影響していれば湿度を下げる、季節性やノミダニ由来であればお散歩時に服を着せてカバー、食物由来であればアレルギー陽性食材を避ける、感想由来であれば湿度の見直しをするなど)を除去していくということが重要となります。
ただし、これは原因を取り除いただけ。
これらが影響しても、皮膚トラブルを起こさない子もいます。
ではその違いはなんでしょう。
大きな違いは、①皮膚バリアがしっかり働いている②腸内環境が整っている③口腔内の環境が整っている、という3点に絞れるのではないかと思っています。
①皮膚バリア
皮膚は、表皮・真皮・皮下織の3層構造になっていて、さらに細かく分けると表皮は4層に分類されます。
この4層の中にある『角質層』というところが、病原菌やアレルゲンなど、外部からの刺激から体を守り、皮膚の水分蒸発を防ぐ機能を持っています。
つまりは、『角質層』に異常があると、皮膚バリアが破綻し、外部からの様々な刺激に対して炎症を起こし、皮膚炎が生じるという流れになります。
私たちの皮膚と比較し、ワンちゃんたちの皮膚はなんと1/6~1/5程度の厚さしかなく、また皮膚のphも私たちが弱酸性であるのに対し、ワンちゃんたちは中性~弱アルカリ性です。
皮膚バリアを強く保つ方法は様々ですが、お体の内側からのケアとしては
1.タンパク質:皮膚を作る原材料
2.ビタミンA:角質層に含まれる天然保湿因子(NMF)の産生を促す
3.ビタミンB6:皮膚粘膜の維持
4.ビタミンE:細胞の酸化防止
5.亜鉛:細胞の新陳代謝活性
6.必須脂肪酸:皮脂の原材料
を意識して摂ってみてください。
特に、最近は「脂質が悪」と思われがちで、低脂質のフードを食べている子で皮膚の乾燥が見られているケースも少なくありません。
市販フードに含まれる脂質は酸化脂質に変化してきているため、できるだけ低脂質のものがお勧めではありますが、脂質自体は体を構成する成分としてはとても重要な栄養素。
そのため、脂質制限をされている子でなければ、低脂質のフードに時々新鮮な脂質(特にオメガ3脂肪酸)をトッピングしてあげることをお勧めします。
②腸内環境
これはもう言わずもがなですが、腸の環境が整っているということは、全身の健康維持にも繋がります。
『皮膚-腸相関』という言葉があるように、皮膚と腸は互いに情報をやり取りし、腸が悪いと皮膚も悪くなり、皮膚が悪いと腸も悪くなり、それには腸内細菌と免疫細胞が関係していることが証明されています。
腸内環境を整えるシンバイオティクス(プレバイオティクス・プロバイオティクス)やバイオジェニックス、食材ではMACs食材と呼ばれるものを意識してみましょう。
③口腔内環境
これは意外と思われたかもしれません。
私たちは皮膚が痒い時に口を使うということをしませんが、ワンちゃんたちは皮膚が痒いと、舐めたりかじったりしますよね。
すでに皮膚バリアが破綻している部分を舐めたりかじったりすることで、口腔内の雑菌が影響し、さらに炎症を引き起こしてしまいます。
そして、口腔内の環境が悪い状況であれば、食事をするたびに口腔内の雑菌が体内に入り込みますので、内臓への影響や腸内環境への影響も懸念されます。
お口の健康も、全身の健康維持の秘訣です。
理想は毎食前後の歯磨きですが、難しい場合にはまずは朝食前に1回、夕食後に1回の1日2回を目指してみてください。
今回はお体の内側からのケアという観点でお話させていただきました。
ただ、外的な環境を整えることや、お体の巡りを整える(マッサージや整体など)も重要ですし、時にはお薬を使わなくてはいけないケースもあります。
独自の判断で、以前処方されたお薬を使ってしまったり、シャンプーをしてしまったりすることで、余計に皮膚トラブルを悪化してしまうということも少なくありません。
日々の予防として①~③を意識していただきつつ、何かトラブルが起きてしまったときには、できるだけ早めに動物病院を受診し、原因を見つけてもらってくださいね。
この記事を書いた人
この記事を書いた人
獣医師
林美彩 先生